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2007年9月 9日 (日)

「百名山を振り返る」その10

一部の方から「20歳のときに北海道で知り合った女性」についてのありがたいコメントをいただきましたが、妙高に登っていた頃はすでに女性は二人とも結婚していました。H隊員も結婚していました。でも、いまだに賀状や旅行先からの絵ハガキなどは続いています。

46座目:十勝岳・・・1988年8月17日。H副隊長と夏休みを合わせて北海道に向かった。旭川行きのJASの飛行機からは羊蹄・大雪・日高はもちろん利尻まで見ることが出来た。旭川空港から十勝岳温泉までタクシー。ポリタンクに水を汲んでザックに収め、歩き出したその一歩の衝撃が今もって忘れられない。「こんなに重い荷物背負って5日間も山の中を歩けるだろうか・・・」 テント・シュラフ・5日分の食料・ビール4本・キャンピングガス・ランタン。25キロほどあった。一人では背負うのに手間がかかるので横に置いたザックに仰向けに寝転がって腕を通し、靴をH副隊長が踏んで手を引っ張って起こしてもらった。CT以上に時間がかかって富良野岳に着いた。イワギキョウの青、シマリス、キタキツネが北海道の山にいることの喜びを感じさせてくれる。上ホロカメットクの避難小屋に着いたのは午後6時半、まさに日が沈むところであった。「こんなペースじゃあ、計画変更せざるをえないね」と、意見が一致。ただし、旭岳まではなんとしても行きたいね、とも。雪で冷やしておいたエビスで乾杯だ。湯煎のチンジャオラオスーと白米・味噌汁だけの夕食だが「ご馳走」だと思えるから不思議なもんである。夜は寒いくらいになって、セーターのままシュラフにもぐりこむ。   翌朝の挨拶「眠れたか?」「ああ、眠れたよ」8月18日、インスタントのチキンライスで簡単に朝食を済ませて出発だ。砂礫が剥き出しの道は火星を思わせる荒涼とした眺めだ。1時間ほどで十勝岳頂上に到着。H副隊長と固い握手だ。その後、十勝が噴火してニュースになるたびにこのときのことを思い出す。  美瑛岳への道では間違って道でないところを通って頂上にたどりつく。後ろから歩いてきた人が同じように道でないところを歩いて来ようとするので大声で「違う、こっち、こっち!」と誘導する。美瑛岳でH副隊長にもらったコーヒー牛乳は死ぬほどうまかった。このあたりからナキウサギの「ツピッ、ツピッ」という声が聞こえだす。実物も何度も目にする。昼飯は鶏雑炊だ。卵混ぜて食ったらそれはご馳走だった。美瑛富士ではエゾコザクラの絨毯。その当時にデジカメがあったならここだけで20枚くらい撮ったかもしれない。この日は双子池にテントを張る。夕食はカレー。H副隊長はウイスキーのポケット瓶を持ってきている。エビスのあとで少しだけおすそ分けにあずかる。

47座目:トムラウシ・・・8月19日。朝食はカツ丼だ。この当時はコーヒーでなくて紅茶を飲んでたな。朝飯のあとに砂糖たっぷりの紅茶。至福のひととき。 テントを撤収。少し降っていて雨カッパを着ての出発となった。テントも濡れて重さを増している。しかし、なんだか慣れというか調子が出てきたというか、荷物も少しずつ軽くはなってきているし、ザックもひとりで背負えるようになってきた。小雨の中、軽いアップダウンを繰り返し、二つ沼で昼にする。まだ10時だけど。山菜雑炊、ことわるまでもないが全部レトルトですからね。ナキウサギに励まされ、イワイチョウの大群落に励まされ、三川台には11:50着。もうすぐトムラウシだ。このアイヌ語そのままの山名に「北海道の山!」を感じない人はいないだろう。沼のほとりをいくつも通過して14:20、トムラウシ到着。恒例の固い握手だ。30分ほど頂上にて時間を過ごす。天候も回復してきた。3時間ほど歩くとヒサゴ沼。ここの小屋は混んでいそうだったので小屋前にテントを張る。沼の周りは全てナキウサギの住処だ。ずーっと鳴き声がきこえている。思い切り冷やしたビールで乾杯だ。夕食はそうめん。たくさん持っていったつもりだったが、飛ぶように売れた。    翌朝、食べ過ぎたのかどうかお腹の調子が悪い。横になってうなっていると心配したH副隊長が「ここで下りてもいいよ。無理すんな」と声をかけてくれる。私「悪いなー。もうチョット待ってくれないか。たいしたことはないよ」 トイレに何度も行っているうちに回復してきた。2時間半くらいお待たせしてテントを撤収。お茶漬けもほとんど食えなかったのでフラフラだ。しかし、ナキウサギとお花畑に元気づけられ1時間で化雲岳。ここから五色岳にかけてのお花畑もすばらしかった。なにがすごいかというとチマチマしていなくて同じ花がずーっと見渡す限り咲いていたりするのだ。唖然・圧倒という字が浮かぶ。「ヒグマ出没注意」の看板が目立つようになる。ラジオの音を大きくする。忠別小屋近くの雪解け水がうまかった。小屋でインスタントラーメンの昼食。このとき食ったラーメンが今まで食ったラーメンの中で一番うまい。こんなラーメンはそうそう食えるもんじゃない。ラーメンで元気回復。忠別岳頂上には13:50到着。今朝の出発遅れで旭岳まで行けるかどうか心配になったがこの調子ならなんとかなりそうだ。なんとか今日中に白雲小屋まで行ってしまおう。今にもヒグマが出そうな道。鳥が飛び立つ「バサバサッ」という音にも飛び上がってしまう。足元には踏みつけそうなくらいにコマクサが咲いている。また逢いに来るまで、どうか盗掘されたりしませんように。17:45、白雲小屋に着いた。テントサイトもよさそうだったが、撤収を考えると気が重い。私「テントがいいか、小屋がいいか?」 H副隊長「任せる。どっちでもいい」 小屋泊まりにした。残っている食料はカレーと親子丼。私「どっちにする?」 H副隊長「任せる。どっちでもいい」予想通りの答えである。わかっているならきかなくてもよさそうなものだが、このあたりが「阿吽の呼吸」というヤツである。カレーにした。これで明朝は親子丼に決定だ。明日は6時間ほどの歩き。毎日12時間くらい歩いていたのに比べれば楽勝だ。トイレに行くため小屋の外に出ると、月明かりに浮かぶ山の姿が幻想的だった。「あー、今オイラは山に抱かれて眠ろうとしてるんだなー」と、感傷的になるのでした。   翌日は雨。小屋泊まりにしておいてよかった。雨の中のテント撤収はツライのだ。5:30出発。6:45白雲岳。8:00北海岳。Photo 8:50、間宮岳。頂上直の雪渓を登れば旭岳、9:40到着。ガッチリ握手だ。11:10頃、姿見駅に到着。缶ビールとソバで乾杯だ。「お疲れさん!」  ロープウェイで下り、温泉で5日間の汗とドロを流し風呂上りにまた乾杯。バスで爆睡して、旭川の「松尾ジンギスカン」でまた乾杯。生ビールがンメーのなんの。 ここでH副隊長とお別れ。H副隊長は旭川空港へ。私は網走へ向かう列車に乗るのでありました。

48座目:斜里岳・・・8月21日は網走駅前のビジネスH泊まり。翌22日、12:00釧網本線を清里町で下りて、まっすぐの道を登山口に向かって歩く。途中で直角に曲がり13:50に登山口に到着する。10分ほど歩いていると車が横に来て止まり「上まで行くの?」 私「乗せてくれますか?」地元の写真愛好家だそうだ。助かったー。何しろ大荷物でヘタっていたのだ。15分で清岳荘に到着。ジャージ姿の管理人さんにお金を払い、700円の熊鈴を買い、小屋の隅っこに収まる。ビールを飲みながら本を読むが、ビール1本はあっと言う間だ。今日の宿泊客は自分を入れて7人。残っていた湯煎の白ゴハンにお茶漬けでメシをかきこんで寝る。沢の音をききながら心地よい眠りにつく。  8月22日、4:10シュラフから出る。4:35出発。サブザックにカメラ・水筒・フルーツ缶・雨具・ガイドブックだけ。昨日買った熊鈴もつけて。一人もくもくと歩く。沢沿いの道はだんだん上へあがるにつれて何度も沢を渡り返す。ちょっとした沢登り気分である。小滝も連続、なかなか楽しい道である。だんだん流れが細くなり、ガレ場になって6:30馬の背に出る。6:40斜里岳頂上。オホーツクが見えた。知床の山々の眺めを期待したが、少し見えた程度だった。来た道を戻り、小屋でラーメンを食べてから下りについた。網走からは特急で札幌。札幌から「北斗星」のソロで帰った。初めて乗った北斗星で楽しむ間もなくシャワーを浴びてグッスリと寝てしまった。

49座目:北岳・・・88年9月2日の信州夜行で甲府へ。タクシー相乗りでまだ真っ暗な広河原に着く。メンバーはH副隊長と私。 9月3日、ヘッドランプを点けて歩き出す。ほとんど眠っていない私はもうろうとしたまま歩いている。八本歯のコルへ向けてフラフラ歩いた。明るくなるとハシゴなどが現れて少しシャキッとする。とにかく眠かった。写真が残っているので間違いなく行ったはずだが北岳の印象はあまりない。北岳山荘で水を買ったのは覚えている。

50座目:間ノ岳・・・北岳から中白峰を過ぎて間ノ岳への登りにかかると雷が鳴り出した。だんだん近くなり、足元で鳴り出した。私「どうする、オイラに任せるか?」 H副隊長「任せる」 雹が降り出す中を少し下って岩陰に隠れる。風の加減で雹が吹き込む。雹がH副隊長の顔に突き刺さるようだ。(あれほど帽子持って来いって言ったのに・・・) 私「帽子貸そうか?もう一つあるよ」 H「大丈夫だ」 岩手県人は口数が少ない。やがて雹もやみ、歩き出す。みるみる雲が晴れ、一瞬だが山並みが見える。間ノ岳頂上でガッツポーズをした写真が残っている。区切りの50がやっぱり嬉しかったんだろうなー。下るほどポカポカになってきて着ていたものも乾いてくる。振り返るとデッカイ間ノ岳。農鳥小屋ではストーブが燃えていた。濡れた靴下を乾かす。日本酒をちびちびやりながら「さっきの雷は怖かったなー」とひとしきりその話題だ。メシを食い終わったとたんに寝た。夜中にトイレに起きた。寒かった。満天の星だった。が、寒かった。   翌日、農鳥に登り「大門沢下降点」ではここで降りないとこの先には塩見が続いているんだなーと思った。(それから本当に塩見に登るまで19年もの歳月が流れようとは・・・) 奈良田に下る間二人で「早くビール飲みたい」とか「ウグウグしてぇー」とか、昨日の恐ろしかった雷は全く忘れたようだった。奈良田で250円の温泉に入ってから生ビールを飲んだら当たり前だがうまかった。

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コメント

25キロもの荷物を背負っての5日間山歩き凄いです!!他雲岳から五色岳にかけてずっと見渡す限りお花畑が素晴らしかったですか♪~月明かりに浮かぶ山の姿が幻想的だったようで、いいわー!!山々に温泉に生ビール、ウマイでしたか。(本当に塩見に登るまで19年もの歳月が流れたのですね…)

投稿: はっしー | 2007年9月 9日 (日) 17時28分

今回はいつもより文章が長いね。それだけ想い出が一杯だったっていうことだ。
読んでるうちに俺も一緒に行ってればよかったって思うけど、多分休みが取れなかったんだろう。
それにしても、この時は飛ばしてるねーーー(^_-)-☆

投稿: H隊員 | 2007年9月 9日 (日) 21時33分

月明かりに浮かぶ山の姿が、どんなに
幻想的なんでしょうね~~♪
想像でしか分らないわ・・・?!

山で雷にあった時は、怖かったでしょうね~!!

投稿: ゆみちゃん | 2007年9月 9日 (日) 21時59分

読む度に男の友情ってやつが
すご~く伝わってきます!
私は北岳で見た夕日が今も
目に焼き付いています☆

投稿: セブン | 2007年9月 9日 (日) 22時09分

今日はありがとうございました。沼田の山彦で蕎麦を食べ少し前、無事帰って来ました。金精峠は台風の影響で通行止めでした。

北海道の山々は皆さんの記事や写真でしか見てないのですが、やはりスケールがでかいですね!!それと、やはり地元、北海道の記事はたけぱぱさんも感慨深いのでしょう!!ペンに力が入っていて読み応えがあります。
北海道の山へ行きた~い・・・。

投稿: やまとそば | 2007年9月 9日 (日) 23時00分

北海道の山は、行くことはないと思うから
(でも利尻と礼文には行きたい)
楽しく読んでいたはずなのに、
食事とナキウサギしか頭に残っていない・・・。
そして、とっても楽しみにしていた北岳。
えっ?印象があまない・・・(涙)。
再登頂レポ、楽しみにしております。
(きますよね、再登頂される日)

投稿: らいず | 2007年9月 9日 (日) 23時28分

はっしーさん、
いつもブログ応援ありがあとうございます。
富良野~大雪の縦走またやってみたいです。
誰かテントをかついでくれる人いませんか?
今度行くときは花の写真をバシバシ撮りたいですね。

投稿: たけぱぱ | 2007年9月26日 (水) 11時47分

H隊員、
そりゃーこのときだって「こういう計画があります」とは誘いましたよ。
でも、おいちゃんはこの時期忙しそうだった。
サラリーマンですから、仕方ないよね。
定年後になるかもしれないが、できれば三人で富良野~大雪縦走やりたいね。
実現の可能性はあるんじゃない?
もちろん、定年前でも行くよ。
楽しみだねー。

投稿: たけぱぱ | 2007年9月26日 (水) 22時38分

ゆみちゃん、
沖縄は暑いですか?
少しは涼しくなりましたか?
kajituさんのCD聴いてますよー。
月明かりに照らされた山は見なければその素晴らしさはわからないですよね。
雷は怖かったですよー。
命の危険を感じましたねー。

投稿: たけぱぱ | 2007年9月27日 (木) 10時13分

セブンちゃん、
先日は日光白根、お疲れさまでした。
マドンナ:セブンちゃんを独占しちゃってH隊員あたりからごうごうの非難を浴びそうですよ。
北岳、また登りたいです。
来月も山に行きましょうね。
紅葉と温泉だー!

投稿: たけぱぱ | 2007年9月27日 (木) 10時23分

やっと10まで読ませていただきました。
よく記録されていたと感心します。

私も終わったら整理しなくては.....

投稿: 雪椿 | 2007年9月27日 (木) 22時08分

やまとそばさん、
富良野~大雪縦走はやはり強烈な山行でした。
今では「もうこんな山行はできないだろうな」と思います。
半面、「もう一度やってみたい」という気持ちもあります。
単独になるかもしれませんが、、できればにぎやかに行きたいですね。
熊も怖いし・・・

投稿: たけぱぱ | 2007年9月28日 (金) 08時22分

らいずさん、
北岳には今年7月に広河原から登って塩見に抜ける予定をしていたんですがね。
三連休をナイスタイミングで襲った台風4号のため、あきらめました。
来年の宿題にしておきます。
利尻・礼文はいいよー。
屋久島と利尻は「100」と「1」の山ですからね。ちょっと特別ですよね。

投稿: たけぱぱ | 2007年9月29日 (土) 11時30分

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