槍ヶ岳(本編)、2日目。
28年前の殺生小屋は夜は真っ暗で、ヘッドランプを忘れて夜中トイレに行くのにえらく苦労した想い出があります。
現在の殺生は廊下に小さい灯りがついており、そんな心配をする必要はありませんが。
2008年9月23日(火)、2時少し前に目が覚める。
風が窓ガラスをガタガタと揺らしている。時々「ビュー」とうなりを上げて風が通り過ぎていく。静かになる。また「ビュー」と「ガタガタ」と。
風の勢いが強まるようであれば心配だが、幸い、強まる様子はない。
今日たどるであろう道のりを頭の中で描いてみる。(13:40までに新穂高温泉にたどりつくためには今日のスタートは5:30で大丈夫だろうか)、など。
少しウトウトしたのだろうか、気がつくと消灯前と同じ状態で小屋の明かりがついていた。
4:25起床。
私「眠れましたか」
みほ「寝たねた~。『まだ寝ろ』って言えばまだ眠れますよ」
布団の中でもそもそとジャージをズボンに履き替える。隣でみほさまも履き替えている様子。
私「なんなら私、どっか行ってますよ」
み「大丈夫です。布団の中で履き替えます」
すぐ出発できるようにパッキングをする。
4:50、小屋のスタッフ「朝食の用意が出来ました」と、知らせに来る。
昨夕と同じ位置に座り、朝御飯をおいしくいただく。
←殺生ヒュッテの朝ご飯。
朝ご飯の時に昼の弁当も配られる。おにぎり弁当のようだ。
歯を磨き、顔を洗って鏡を見ると鏡には「○○山岳部」の文字が。
(生きてるうちにまたこの鏡を見ることはあるんだろうか・・・)
大袈裟と思われるかもしれませんが、前回ここに来たのは本当に28年前ですからねぇ。
2階に戻り、ザックを持って下りてくる。スリッパを登山靴に履き替え、外に出てみると、真っ先に目に飛び込んできたのは富士山の姿。
←南アの左に富士山が。
小屋の玄関に戻ってたまちゃんに「富士山が見えるよ!」。なぜか小声で言いました。
←富士山をズームアップで。
←朝の殺生小屋玄関。
←青空に突き刺さる槍の姿。
たまちゃんとみほさまが小屋のスタッフに挨拶している声が聞こえる。
「どうもお世話になりました~」
ガラっと玄関の引き戸を開けて一言、
みほ・たま「わーすごい。最高の天気!」
富士山方面を撮り、槍を撮り、5:29出発。
←テン場には3張。写真撮影のために長期滞在の方もいるようです。
←早くあのてっぺんに立ちたい。
←みほさまとたまちゃんが見ているのは次の写真の方角です。
←クッキリと富士の姿。その右に南ア。富士の左には八ヶ岳。画面左三角にとがった山は常念。
←殺生ヒュッテを振り返る。
←次に槍を見ると穂先からオレンジ色に染まり始めている。
←だんだんオレンジ色が強くなってくる。
←この姿には正直に感動した。
たまちゃんが「すごーい、すごーい」と言って泣いている様な、鼻をすすっているような気配だったが、振り向くと自分も泣いてしまいそうだったので、振り向かずに、
私「こりゃ、感動の一語だなー」
と言うのが精一杯だった。
←奥は八ヶ岳。左の三角は常念。たまちゃんとみほさまの間に殺生ヒュッテ。
←朝の光がだんだんと下りてくる。と同時に空が青さを増す。
←我々にも太陽の恵みが。
陽の光を浴びながら歩いているとまわりはオレンジ色から黄金色の世界に。
時折風が強く吹き、帽子が飛ばされそうになる。
みほ「ちょっと帽子かぶり直していいっすか~」
←槍ヶ岳山荘が近くなってくる。
9:01、槍ヶ岳山荘に到着。
みほさまの帽子はあごひもがついているからいいのだが、私の帽子は普通のキャップ。ここからは帽子に気をとられているわけにはいかないので、帽子を脱いでタオルを頭に巻く。
←小屋前のテラスから。頂上に立つ人やこれから向かう人の姿が見える。
サブザックに水と貴重品を入れ、その他の荷物とストックは小屋前に置かせてもらう。
9:04、頂上アタック開始。
私「みほさん、先頭たのんます。オレ、最後ね」
み「ういーっす」
←小屋の右に笠ヶ岳。左に焼岳。
←大変そうに見えるが、危険なところはない。
←長いハシゴが2箇所、短いハシゴが2箇所ある。たまちゃんは「ハシゴが苦手」と言っていたが、なんということもなく通過。
←頂上近くでは登り専用と下り専用に道が分けられている。
←思わず「おぉ!」と声が出る。笠ヶ岳に朝日が当たる。笠の向こうには加賀の白山。
←たまちゃん、最後のハシゴ。これを登れば頂上。
6:24、槍ヶ岳頂上。三角点にタッチ。たまちゃんと硬い握手を交わす。
そして見渡す限りの山々。これ以上の眺めはありません。
←私、28年ぶりの槍頂上。
←影槍。右端の少し白いのは黒部五郎、左端は笠。
←北アの山並みをバックに。真中あたりに白馬・鹿島槍。左端は剱岳。
←奥穂・前穂が見える。前穂の向こうは木曾駒。焼岳の向こうは乗鞍。乗鞍の向こうに頭だけ御嶽山が見える。
←前穂の左に南ア・富士山・八ヶ岳。
←白馬方面。右奥は妙高・火打。
←最後に穂高・焼・乗鞍をバックに。
6:50、名残惜しい山頂をあとにする。
←みほさま余裕のピース。
7:10、槍ヶ岳山荘に戻る。
←山荘でグッズ漁りのみほさま。マグカップをゲットした。
私もここで若き友人がまだ働いているかどうかきいてみた。
私「HNが『まちゃる』っていうんですけど、まだここで働いてますかね~」
小屋の兄さん「○○まさるかな~」
私「今年の4月からここで働いてるハズなんですけど」
兄「あっ、そうですね。そいつなら今休暇です」
というわけで「まちゃる」には会えなかった。
引き戸を一つ開けるとコーヒーの香り。ここでみほさまは前からおっしゃっていたクロワッサンをゲット。
←クロワッサンゲットで微笑むみほさま。ピンボケですみません。
山荘での用事を済ませ、今度は槍をバックに記念撮影タイム。
←7:35、槍ヶ岳山荘発。
←テン場を通り抜け、山荘から100mのこの位置でもう一度記念撮影。
アルペン踊りを踊るの忘れた。三角点の写真を撮るのを忘れた。
←7:43、ここで槍とはお別れ。飛騨側に下ってゆく。
標高2900m、2800mの標識がある。グングン下っていく。
←8:20、小休止。
←私「笠ヶ岳にもまた登りたいなぁ」
み「来年笠ヶ岳登ろうっと」
←ここでクロワッサンをいただく。私もおすそ分けにあずかる。
乗る予定のバスは新穂高温泉13:40発。アルペン浴場に入るためには13時までには新穂高に着きたい。
み「タダの温泉はいりた~い。がんばりましょう」
たま・私「は~い。がんばりま~す」
←ナナカマドの赤。空の青。笠ヶ岳。
←オヤマリンドウ
9:07、水場通過。「最後の水場」と書いてある。
←キヌガサソウが丸い実をつけている。
9:42、槍平小屋に到着。先ほどの休憩場所から一気にここまで来た。
ちょっと早いがお昼にする。テン場に腰を下ろし、殺生のおにぎり弁当をいただく。おにぎりの塩分がお腹とこころに沁みる。
←クマさんの看板には「山小屋で働いている皆さん!!どうぞお立ち寄りください。お茶でもどうぞ。※山域、系列会社、社員アルバイト等、一切関係ナシです」と書いてある。
←藤木レリーフ
←10:32、滝谷出合。
三分休んですぐ出発。
みほさまは「温泉・ビール・温泉・ビール」と念仏のように唱えている。
ここから白出沢までCTは1時間20分だが、1時間で白出沢に到着。11:31。
←ここからは林道歩き。お二人ともホッとした表情。
安心したのか少しペースが落ち、CTどおりの1時間半で新穂高温泉に到着。
←みほさまのストックを借りて歩くたまちゃんに、
私「たまちゃん、着いたよ~。もう歩かなくていいよ~」
たまちゃんは無言のニッコリピースで応える。
13:00、新穂高温泉に到着。
アルペン浴場の前にバス停がある。バス停に近づくと同時にタクシーの運ちゃんが近寄ってくる。
運「乗ります?」車を指し示す。
私「バスで行きます」
運「バスは夏休みだけだよ。今走ってないよ。中の湯まで9000円くらい。そこまで行けばボンボン(バスが)はしっとるよ」
私「ネットで調べてきたんだけどなー」
と、もう一つのバス停「高山行き」の方に女性二人組が。
その二人にきいてみると、13:50の高山行きで平湯で下りれば松本行きのバスに乗り換えられるとのこと。
私「みほさま・たまちゃん、不手際で申し訳ない。平湯乗り換えで行きましょう」
たまちゃん「じゃ、10分遅くなったからその分ゆっくり温泉に入れますね」
どこまでも優しいたまちゃんである。
←というわけでアルペン浴場(無料)へ突入。
源泉そのままだと熱いので、ホースの水で埋めてある。
脱衣所には一人涼んでいたが、風呂場には誰もいない。お湯を体にかけてから湯船にドボーンと浸かる。幸せなひととき・・・
やがて女風呂からみほさま・たまちゃんの声が聞こえる。
私「そっちもホースの水で埋めてあるかい?」
み・た「はーい。ホースの先が入ってます」
私「じゃあOKだ。こっちは貸切だけど~」
み・た「こっちもですよ~」
風呂から上がるとたまちゃんがお土産屋さんを物色していた。
私「みほさんは?」
た「まだ入ってますよ。髪洗ってるみたいです」
やがてみほさまも出てきてビール・つまみを買う。
ここでなんとみほさまのありがたい一言、
み「たけぱぱさん、今日はビールおごりますよ」
ありがたく頂戴いたしました。
橋の袂に丸い石のテーブルがあったのでそこで乾杯。
飲みきらないうちにバスの乗車が始まったので、缶ビールを手に持って乗り込む。
←高山行きのバス。
一番後ろにちょうど3人くらいの席があったのでそこに座る。
ビールを飲みながらじゃがりこを食べながら出発を待っていると、大きなザックを持った6~7人組みが乗ってきた。我々の前の席があいていたのでそこにすわろうとする人の中の一人が私の顔をじっと見ている。
私「nagaoさん?」
nagaoさんがコックリうなずく。
nagaoさんとは今年6月1日に霧島を一緒に歩いている。
みほさま・たまちゃんを紹介する。
nagaoさんたちは笠ヶ岳に行ってきたとのこと。
←nagaoさん。バッタリの証拠に1枚。
バスは13:50に出発。たまちゃんは即寝。
14:25頃、平湯でバスを降りる。
松本行きに乗り換えるつもりだったが、ここから新宿行きの高速バスも出ているようだ。
14:30のバスは満席だったが、15:30のバスに空席があった。
1時間ほど時間があいた。
誰からともなく「生ビールでも飲んでマッタリしますか~」
ところが、生ビール「入れ替え中」とかで10分待ってくれという。
セルフサービスの食堂だったので、テーブルについて生ビール待ち。
私はビールばかり飲んでいるとトイレが近くなってしまうのでお土産屋さんで日本酒を買ってちびちび飲み始める。
←鬼殺し純米
やがて生ビールの準備が出来、みほさま・たまちゃんは生ビールで乾杯。
←ちょっとだけたまちゃんにおすそわけいただいた生ビールがうまかった~。
nagaoさんたちは15:30のバスに人数分の席がとれなくて、松本行きのバスに乗っていった。
そういうわけで15:30のバスはほぼ満席だったが、たまたま空席があって三人で固まって一番後ろに座れた。
そして一番後ろにはトイレがある。
私「トイレがあったんだね。だったら生ビール飲めばよかった~」
ウトウトしながらバスにゆられてフト窓の外を見ると進行方向左手に八ヶ岳がキレイに見える。
(今日は一日天気よかったな~)
←諏訪湖S.A.で休憩。
レストランで無料のお茶を飲んでいるとやはり八ヶ岳がキレイに見える。右は編笠あたりから左は蓼科まで。
私「たまちゃん、八ヶ岳がキレイに見えるよ」
たまちゃんを窓際まで連れていって「あれが赤岳、あれが天狗・硫黄、一番左が蓼科」と説明する。
ふたたびバスに乗り込んでウトウト。
次に目を開けると右の車窓に甲斐駒と鳳凰三山が。
少し渋滞で遅れたが、8:30頃新宿西口に到着。
バスを降りたところで締めの「ファイト~、マッスル、マッスル!」
みほさま・たまちゃんは埼京線、私は中央線なので駅の通路で握手をして別れる。
私「また一緒に登りましょうね」
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